コンテンツへスキップ
ホームページ » 日々のひとしずく

日々のひとしずく

何気ない毎日の中にこぼれる、小さな気づきのしずく。

春の音

 

四月五日の復活祭の朝、私はモン・トランブランの家で目覚めました。昨夜雨が降ったので、まだ二十センチ程残っている雪が少し溶け、その表面はガリガリになっていました。道路と家の間の車寄せは、半分水浸しになり、泥んこでした。

 

ちっとも綺麗ではありません。以前は滑らかで真っ白だった雪は、小石や埃やモミの木の枯れ葉などをかぶって、茶色くなっていました。何度もやってきた吹雪で折れた木や枝が、そこらじゅうに散乱しています。

 

世界にはまだ色がありません。目の前の丘に見えるのは、葉を落として、茶色っぽい灰色の幹だけになった木々や、変色し、疲れ果てた常緑樹。その足元のところどころには汚れた雪。鉛色の空。

 

思わずため息が出ました ー 春が待ちきれなくて。

 

午後、長靴を履き、スコップをもって外に出ました。勝手口から車寄せまで、溶けかけた雪をガリガリ削って通路を作りました。真冬の雪に比べ、水分を含んで、ずっしりした重さです。やっとの思いで、水たまりに足を踏み入れた時、パシャッという音がしました。

 

パシャッ! 水の音です! 最後に水の音を聞いたのは、六ヶ月前のことでした!

 

それから、道路沿いの溝からもっと大きな水音が聞こえてきました。冬の間中、溝はカチンカチンに凍って、その上に厚く雪が積もります。やっと、その雪が半分ほどなくなったので、雪溶け水を集めた流れが姿を現し、力強い音があたりに響いていました。

 

水の音は、全く音のない冬の静けさを破っていました。もうすぐ、さまざまな音や、色が次々とやってくることでしょう。鳥の歌声、草や木の芽吹き、色とりどりの花々などが。

 

水の音は、春の一番乗りの合図、いのちの復活を告げる最初の音でした。

歌声をたよりに

二〇二六年三月

新しいカレンダーのページをめくると鳥の写真と説明が出てきました。

見たことのない鳥でした。でもその声は聞いたことがありました ー

ライオンの雄叫びのように力強い歌声でした。

ローレンシャン地方で初めてキャンプしたとき、

霧に包まれた穏やかな朝をつんざくような大音声が響き渡ったのです。

それは静かな湖面を波立たせるように、

山を満たしました。

私は、すっかり心を奪われ、声の主を探しました ー

でも見つけられませんでした。

夫がフランス語の鳥図鑑をくれたので、

探してみることにしました。

それは見たことがない鳥でしたし、

むろん名前も知りません。

手がかりは、その歌声だけでした ー 

「耳に残る曲だけが頼りでした。」

一ページ、一ページ 

一行、一行 指でなぞりながら

姿の見えない歌い手と

その歌声を探しました

驚いたことに、

それはスズメの仲間 ー ほんの小さな鳥でした。 

Bruant à gorge blanche. (ノドジロスズメ)

歌詞は “Où es-tu Frédéric, Frédéric, Frédéric”

(フレデリック、どこにいるの?)

三月のカレンダーにはこう書かれています。

White-throated Sparrow は “Oh sweet Canada, Canada, Canada”と歌います。

この鳥は、春から夏の間にローレンシャン地方

に戻ってきます。

その二か国語の歌をまた聞きたいと

今からとても楽しみにしています。

歌声はここです。あなたにはどんなふうに聞こえますか?