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旅路

発見とときめきに満ちた、心おどる旅の記録。

白樺の木立

カナダに到着した最初の土曜日、夫が言いました。「これからオタワへ行くよ」

 

オタワがカナダの首都だというのは知っていましたが、どこにあるのか、どのくらい遠いのか見当がつきません。

 

車の窓から、私は見たことのない景色をじっと見つめ続けました。

これからは、ここが私の暮らす本拠地になるのです。

 

 

道の左側に何か赤いものが見えました。

楓の葉が紅葉して、赤くなっていました ー まだ八月の半ばだというのに。

 

赤の向こう側には、何やら白っぽいものがあります。

 

近づくと、白樺の木立が姿を現しました。

 

 

その途端、ロバート・フロストの詩の最初の二行が頭にひらめきました。原文の英語で。

 

When I see birches bend to left and right

Across the lines of straighter darker trees,

(まっすぐで濃い色の木々の列を越えて

白樺が左右に曲がっているのを見ると)

 

大学一年の時、文学の時間にこの詩を習いました。

 

その時には、どう頑張っても、この二行の光景を思い浮かべることができませんでした。

 

 

なのに、その実際の光景が、思いがけず目の前に姿を見せていました。

ああ、私は、この目でその様子を見られるほど、遠くまで来てしまっている。

 

いや、ここは、かの詩人が住んでいた場所より、ずっと北なのだ。

 

私は、この地で残りの人生を過ごす覚悟でやってきた。

もう戻れない。戻ることができないように、逃げ道を全部閉ざしてきたから。

 

でも、本当に耐えられるのだろうか?

ふと気がつくと、全く見えない未来を前にして、涙が数筋頬を伝っていました。

 

我に帰った時、白樺の木立は、とっくに背後に姿を消しています。

 

 

涙のわけを夫に説明しなくては、と思いました。

それは、彼とは全く関わりなく、彼が傷つけたのではないから、気にしないでと、伝えたいと思って。

 

でも、できませんでした。

気持ちが、言葉より深いところで、私を動かしていたからです。

 

車が先へ進んでいく中で、胸は不安と、どうなるのだろうという想いで一杯になり、私は何も言えずに黙り込んだままでした。